## 台湾発のAppier Group、マザーズに上場。INITIALピックアップニュース3選

INITIAL編集部が選ぶ、先週の注目ニュースは以下の通りだ。

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今週は注目のニュースと資金調達を選定した。

__台湾発のAppier Group、本日東証マザーズに上場__

Appier Group（以下、エイピアグループ）が3月30日に東証マザーズに上場した米国を含む国内外での公募により146億円を調達し、公開価格で算出した時価総額は1598億円となっている。台湾発の同社は東証への上場でアジアでの知名度を向上させ、グローバル化を加速させる。

__注目ポイント：台湾発、東京経由で世界を目指す__

エイピアグループは2012年に台湾で設立されたAppier（エイピア）の持株会社である。エイピアはAIを活用したマーケティングツールを提供しており、すでに台湾、日本だけでなく、米国、インド、オーストラリアなど15カ国で事業展開する。Sequoia Capital India、ジャフコ グループのアジア向けファンド、LINE、ソフトバンクグループ、NAVERなど著名投資家がこぞって投資しており、中でもSequoia Capital Indiaは第二位株主となっている。

2020年12月期の連結売上高は前年同期比24.2％増の90億円、営業損失は16億円だった。黒字化には至っていないものの、2020年12月におけるARR（年間経常収益）は94億円と先日ARR100億円突破を発表したfreeeに匹敵する規模となっている。月次顧客解約率がコロナ禍にも関わらず、2019年の0.98％から2020年は0.82%に下がっている点にも注目である。

同社の成長を支えているのはアジア市場だ。2020年12月期の連結売上高のうち、68％を日本及び韓国の北東アジア地域、10％を東南アジアが占める。同社の広報は「文化が多様なアジア市場で成功することができれば他の市場も開拓できると考え、アジアを成長の柱に据えている」と話す。アジアで知名度を向上させる狙いから、上場先も台湾企業ながら東証マザーズを選んだ。

同社は潜在顧客の発掘から、ユーザーの分析、個別の特徴に合わせたマーケティング施策の実行などの工程別に４つのサービスを提供する。「1つのサービスを利用することで顧客に関するデータがたまり、それを活用するために他のサービスについても契約するという顧客も多い」（同社広報）という。

マーケティングの各工程のサービスを一気通貫で提供するために、同社はこれまでM&Aを積極的に活用してきた。2018年にはインド企業を、2019年には日本のスタートアップEmotion Intelligence（エモーションインテリジェンス）を買収している。エイピアのエンジニアのうち、約70％がAI又はビッグデータの領域における博士号又は修士号を保有している。AI技術を付与し、買収先のサービスを伸ばしてきた。IPO後も変わらずM&Aを成長戦略の1手段と位置づける。

日本のSaaS企業が海外で成功している事例は少ない。台湾発、東証マザーズ上場というユニークなグローバル企業であるエイピアは今後、M&Aなどを活用して順調に成長を続けられるのか。日本のSaaSカンパニーが成長戦略を練る上でもエイピアの今後の動向は一つのベンチマークになりそうだ。

__NEXTBLUE、1号ファンドを設立__

独立系VCのNEXTBLUEは1号ファンドの目標額30億円の約半分の資金を集め、一次募集を完了したと発表した。一時募集では丸井グループ、Q’s Fix、ギフティ、複数のエンジェル投資家がLP出資した。

__注目ポイント：日本だけでなく、欧州のスタートアップにも投資__



本ファンドの特徴は日本だけでなく、欧州のスタートアップにも投資し、日本での事業立ち上げを支援している点にある。既に国内ではシードステージのSaaS企業を中心に8社、欧州ではドイツのAI企業を中心に6社に出資済みだ。

通常、日本のVCが欧州のスタートアップに投資するのはハードルが高い。代表パートナーの郡 裕一氏は同ファンドの強みを「パートナーのヴィンセント・タンがドイツに常駐し、現地のVCと親しい関係を作ることができています。私が以前運営していたReality AcceleratorでもスウェーデンのVirtusize（バーチャサイズ）に投資し、日本進出をサポートしたことから、良い評判も得られています」と語る。欧州のスタートアップにとっては、出資にとどまらず、日本でのプレセールスや支社立ち上げまでをサポートしている点も魅力的なようだ。

近年、欧州発のグローバルスタートアップの成長が著しいが、それを支えるアーリーステージの投資家は不足している。そのため、NEXTBLUEは欧州市場でもマイナー投資家が入り込む余地があると見る。

郡氏は「今後はデジタルヘルス領域の規制緩和が進むほか、スマートシティーに対する各国政府の多額の投資が見込めます。今後10年は欧州からデジタルヘルスやライフスタイル関連の面白いスタートアップがたくさん出てくるでしょう」と指摘する。日本だけでなく、欧州市場も狙うNEXTBLUEの動向に注目だ。

__Catallaxy、4.1億円の資金調達__

特注金属部品の受発注プラットフォームを提供するCatallaxy(以下、カタラクシー)は4.1億円を調達したと発表した。

__注目ポイント：シンガポール政府系ファンドと既存投資家からの追加調達__

今回、カタラクシーは既存投資家のインキュベイトファンド、SMBCベンチャーキャピタルに加え、フューチャーベンチャーキャピタル、長瀬産業、シンガポールのPavilion Capital Internationalからも資金調達した。

Pavilion Capital Internationalはシンガポール政府系ファンドのTemasek Holdings傘下にあるPEファンドだ。日本での投資実績はfreee、KDDIに買収されたソラコムであることから、カタラクシーへの高い期待が伺える。

カタラクシーがサービス展開する金属加工市場は約15兆円（経産省「工業統計調査」）　と国内だけでも巨大な市場であるが、デジタル化が進んでいない。同市場では2018年にシリーズAで10億円を調達したキャディが競合となるものの、潜在需要が大きいため成長余地はありそうだ。今後カタラクシーとキャディによる市場変革が期待される。

## 米著名VCのAndreessen Horowitzがマーケットプレイスの最新トレンドを発表

Facebook、Slack、Airbnbなどへの投資で有名な米VCのAndreessen Horowitz（以下、a16z）が『The a16z Marketplace 100: 2021』を公開した。同ランキングは昨年からBloomberg Second Measureのデータに基づき、a16zがGMV（流通取引総額）を推定し、マーケットプレイス領域で急成長している未上場スタートアップ100社を紹介している。100社のランキングだけでなく、トレンドの変化についても触れられていることから、今後のスタートアップの動向を占うヒントとして米国だけでなく全世界のVCが注目している。

今回は同レポートの中から2020年のマーケットプレイス企業の動向や新たに生まれた注目トレンドについて紹介する。スタートアップ100社のランキングには事業領域に大きな変化が見られた。

2020年は新型コロナウイルス感染症（COVID-19）がマーケットプレイス企業にも大きな影響を与えた。前年のランキング上位に入っていた民泊サイト「Airbnb」、フードデリバリー「DoorDash（ドアダッシュ）」、ファッション専門フリマアプリ「Poshmark（ポッシュマーク）」などの著名スタートアップは変化に適応しながらIPOまでこぎつけた。

最新のランキングでは流通総額がより特定の企業に集中したことが特徴の1つとしてあげられる。ランキング1位の食料品即日配達サービス「Instacart（インスタカート）」は100社の流通総額全体の76%を占めた。米国ではCOVID-19の感染拡大で外出が制限され、失業者も急増した。インスタカートは外出を望まないサービス利用者と買い物代行で生計を立てたい人のニーズをマッチさせて急成長を遂げた。

従来、流通総額の大きく、ある程度普及が進んだマーケットプレイス企業が高成長を維持することは難しい。しかし、2020年はCOVID-19の影響で需要が急拡大し、食料品配達のインスタカートや卸売りのFaire（フェア）のようにすでに成熟した企業が大きく成長した。

インスタカート以外にも、COVID-19による社会の変化にうまく対応できたスタートアップが事業を急拡大させている。厳しい外出制限により米国では消費者行動に大きな変化が見られ、いくつかの注目のトレンドが生まれている。

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旅行領域では従来、チケットやツアー、ホテル予約がメインだったが、COVID-19で消費者が求める需要は大きく変化している。そんな中、キャンプ場版のAirbnb「Hipcamp（ヒップキャンプ）」やキャンピングカーで車中泊をする人向けにワイナリーや農園での体験サービスを提供する「Harvest Hosts（ハーベストホスト）」などが支持を集めた。

ファッション領域ではオンラインで購入が可能な二次流通のマーケットプレイスの成長が加速した。ハイブランドやデザイナーズブランドなどユニークな商品を中古で割安に購入できる点が消費者にうけた。

こうした収集品のカテゴリーは日本でも成長の兆しが見えている。2020年にはモノカブが約4.5億円、SODAが約25億円の資金調達をしている。スニーカーやアパレルに特化したCtoCフリマアプリ「スニーカーダンク」を運営するSODAはプレスリリースで2020年は前年対比で数千％の成長を公表している。

参考：[SODA、累計約25億円の資金調達でグローバル展開へ](https://initial.inc/articles/briefing16)

米国では、2020年以前は事業化が難しいと思われていた事業領域で複数のスタートアップが急成長している。最大の躍進を遂げたのが3〜18歳向けのオンライン学習プラットフォーム「Outschool（アウトスクール）」。前年の59位から一気に10位まで順位を上げた。有名人に結婚式などのパーティー用のパーソナライズムービーを頼める「Cameo（キャミオ）」、花のEC「Floom（フルーム）」もランクインしている。

COVID-19の流行前とはまったく異なった顔ぶれが業績を伸ばす一方で、育児市場は61％、チケット市場は52％、オフィススペース市場は30％縮小している。2020年は多くの企業がビジネスモデルの再考を余儀なくされた。a16zは「市場の大きさだけでなく、いかに顧客を満足させるサービスを提供しているかが重要だということが明らかになった」と指摘している。

出典：[Andreessen Horowitz『The a16z Marketplace 100: 2021』](https://a16z.com/marketplace-100/)

（文：平川凌、編集：濵田尚子、デザイン：石丸 恵理）

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