「丁寧にアドバイスをしているのに、全く効果がでない。」
こんな課題を持っている人は多いのではないだろうか。
本記事では、Googleやシリコンバレーのスタートアップでの勤務経験もある三好さんのamiライブを元に、組織の成長に必ず関わってくる「人間関係」の問題を分かりやすく図解して解説している。
なぜ人は変われないのか?その答えはシンプルだった。
Inner Technology 三好さん(以下、三好) こんにちは。
ami佐久間(以下、佐久間) Inner Technology の三好さんに来ていただきました。まず、自己紹介をお願いします。
三好 こんにちは。三好大助です。僕は、孤独に戦っている起業家の方々の1対1のメンタリングサービスを提供したり、ベンチャーから大企業まで、チームや組織を進化させていくための講座、グループセッションを提供しています。
仕組みや制度設計を、組織の中で変えたとしても、うまくいかないことって多いじゃないですか。
制度や仕組みを、どういう人間の関係性や意識から扱うのか。たとえるなら、仕組みがモバイルのアプリだとしたら、関係性だったりそれぞれの意識がOSになる。アプリがどんなに新しくても、それを動かすOSが古いと機能しないですよね。それと同じように、関係性の質や各々の意識が開いているからこそ、優れた制度や仕組みもより機能すると思っています。
「その両方をセットで扱った方がいいよね」と、Googleやサンフランシスコでのスタートアップの経験から考えるようになり、両方をセットで組織変容を支援するということを現在行っています。
佐久間 すごい壮大なことに取り組まれていますね。
三好 いえいえ、シンプルですよ。
今日はそもそもの課題意識と、僕が今持っている仮説を皆さんと共有できたらなと思っています。
佐久間 そのために、今日はホワイトボードを使います。
三好 そうなんです!使わせていただきます。
まず問いとして共有したいのは、「なぜアドバイスを一生懸命しても、変わらない人がいるのか?」ということ。
また、もっと大きいところでいくと、組織のフェーズが変わって50人の壁や100人の壁が現れるといいますよね。
加えて、いいプレーヤーがマネージャーになったときに、なかなか部下を育てられないという状況に頭を悩ませる方も多いと思うんです。
それはどういう風に起きるのか、合同会社CCCで開発している “レゾナントリーダーシップ©” という人材育成プログラムのフレームワークがあるので、それをご紹介しながら紐解いていきたいと思います。
佐久間 全経営者が聞きたいやつですね(笑)。
上司と部下という関係性において、ティーチングやアドバイスだけでは、うまくいかないということですね。
人材の「4象限」で考える、コミュニケーション
三好 フレームワークと言ってもあくまでこれは仮説なので、そういうこともあるかもね、という姿勢で見てほしいんです。
まず、縦軸にコミットメント、横軸に行動する質と量をおいて、4象限を取ってみます。この4象限の中に組織の人材をマッピングしていくことで、人材の現状やそれぞれの象限に対する育成アプローチを分析できることが、このフレームの優れたところだなと思っていて、許可を得てよく使わせていただいています。
※ライブ中に書かれたホワイドボードの内容の再現です
まず右上から見ていきたいんですが、コミットメントが高くて、かつ、行動の質と量が伴っている人はどんどん「躍進」していく。当然ですよね。
コミットが高いし、求められている行動のクオリティもちゃんと満たしてやってくれる人は、組織のパフォーマンスを出すので「躍進」していくと思うんですよ。
佐久間 行動の質と量と、コミットメントで高い低いみたいな4象限をつくると、両方高い人は、当然、組織の中で躍進して成長していくと。
三好 はい、そんな風にこの図を見ていきたいんです。
逆に、コミットは低いんですけど、言われたこと、期待値をしっかり満たしていくという人もいるじゃないですか。レスポンシブだけど、インプットすればアウトプットはちゃんと出してくるみたいな人ですね。
でも、コミットやモチベーションは必ずしも高くないよな、って人いるじゃないですか。そんな人たちを反応的なイエスマン、ということで「反応」と呼んでみます。
逆にコミットは高いんですけど、まだ行動の質と量が伴っていないという人もいると思うんですね。新入社員や中途入社の方のように、新しい環境でモチベーションもあるんだけど、期待に対して応えられるほどのクオリティを出せていないようなケースですね。
壁に当たっているという感じですね。なので、「壁」と表現したいと思います。
一番最後、コミットもなければ期待にも応えられない。悲しいですけど、そういう方もいらっしゃると思うんですよ。組織の中で「停滞」してしまう方ですね。
というかたちで、「躍進」「反応」「壁」「停滞」と分けてみました。
ちょっと具体的な例で見ていきたいんですが、ユーザベースさんって、それぞれ何%ぐらいだと思いますか?
佐久間 「躍進」が100%って言いたいですが。
改めて、本当に「躍進」が多いと思うな。70~80%、それくらいかな。
三好 70~80%。ほかはどうですか?
佐久間 あとは、「壁」が15%、「反応」が5%ぐらいですかね。
三好 「停滞」はほとんどいないということですね。素晴らしいですね。
佐久間 ありがとうございます。
三好 これを1,000人以上規模の企業の部長や経営層に聞くと、「停滞が20%くらい」と言う方もいらっしゃる。コミットもクオリティも低いので、この人たちを抱えているだけで経営的には負債じゃないですか。
佐久間 間違いないですね。
三好 採用コストもあれば、給与や福利厚生費も払っていますよね。
佐久間 そのような人を採用しても、お互い本当に不幸ですよね。
「タイプ」は環境で変わりうる
三好 ポイントは、必ずしも、固定的に「このタイプの人がいる」というわけじゃなくて、それぞれの仕事のフェーズと環境で移り変わると思うんですね。
たとえば、「躍進」的な活動をしている人に対して、新しいチャレンジのポジションを与えたとすると、基本的には難易度が高い挑戦になりますよね。
なので、「躍進」の人たちは壁に当たるわけですよね。「その壁をぶち破ることで成長する」という期待のもと、企業はそういう人材配置を行うと思います。そしてそうやって人が成長するということは、ある程度事実だと思います。
ただ、そういう人材配置をして「壁」に移った人に対して、現場でどんなケアができていますか?というのが投げかけてみたい問いです。
そこで質問なんですが、この4象限の、どの層の人たちであればアドバイスが効くと思いますか?
佐久間 「壁」じゃないですかね。
三好 「壁」にアドバイスすると何が起きると思います?
佐久間 われわれの場合、ビジョンやバリューのところで、「本音ベースでしっかり話せるか」を一番大事にしているので、それさえ高ければ、その人自身のトライで壁は打ち破っていけるのかなと思います。
三好 そうですよね。おっしゃっていただいた通りだと思っていて、本音を話せればいいと思うんですよ。
基本的に、「壁」の人たちって何をやればいいかは分かっているんですよね、アクションとして、これをすればいいというのは分かっているんですよ。
でも、それをやっても成果が出ない期間が壁なわけじゃないですか。
そこで、「もっとこうした方がいい」みたいなコミュニケーションを受け続けると、「いやそれは分かってるけど、うまくできないんだよ!」っていう内心だと思いますし、基本的にこの人たちはまだ結果が出ていないので、内側は不安と焦りでいっぱいになりますよね。
佐久間 間違いないですね。
三好 そして、度重なるアドバイスによってそれがさらに膨らんでしまう。マネジメントの立場にいらっしゃるので想像に難くないと思うんですけど、不安や焦りの中でどれだけアクションしても、生産性は落ちますよね。焦りが膨らんでしまうと、もともと持っていたクオリティも下がってしまう。
結果が出ないのに伴い、自己肯定感も下がって、コミットメントもモチベーションも落ちてしまうことがあると思うんですよ。
その中でプライドが高い人は自尊心を守りたいので、組織から出て退職か転職をする、もしくは、ほかの部署に異動する、という行動につながると思うんですね。
結局、不安や焦りが膨らんでしまって落ちてしまう人もいる可能性を考えると、アドバイス以外の選択肢も必要じゃないか、という発想がでてくると思います。
こうした元々「躍進」にいたけど、チャレンジングなポジションを与えられて「壁」に移行する人たちって、社内ではエース的な存在なわけじゃないですか。こうした存在をいかに現場で育てていくかって、実は企業にとってすごく重要な経営課題だと思っています。
「イエスマン」が作られる仕組み
一方、この「反応」の人たちに、指示命令を繰り返すと何が起きると思います?
佐久間 本音ベースのコミュニケーションができない人とずっと話して、「こういうことをやろう」と、コンセンサスが握れたとしても、それは本音ベースのコミュニケーションじゃないので、結局行動につながらない。私の経験上、そう考えています。
三好 そうですよね。オープンに話すことができず、落ちていくこともあると思うんですよ。ただ、基本的には、この人たちは期待に応える馬力はあるんですよ。
ただし、そういう人たちにアドバイスだけすると、基本的にイエスマンしか育たないんですよ。こういう人たちは期待に応えられるので、昇進はするじゃないですか。
この人たちが、部長クラスになってマネジメントをし始めると、もう大変です。
佐久間 崩壊ですね。
三好 まあ崩壊とまではいかないまでも、長期的には大変なことになります。結局、「反応」の人が部下を育成すると、自分が受けたのと同じ育て方しかできないので、イエスマンが増殖しちゃうんですよ。
さっきも言ったんですけど、「躍進」は大丈夫じゃないですか。
基本的に組織が大きければ大きいほど、「停滞」している人たちは、組織に対する恨みや不満にすごいものがある。誰も自分たちの気持ちを分かってくれてない、という内側ですね。
一方「躍進」の人たちにはアドバイスが効くけど、それ以外の人たちには、アドバイス以外の選択肢もあるといいよねという、そういう提案なんです。
佐久間 分かりました。アドバイスが効くのは、右上だけだということですね。
三好 アドバイスだけで済む可能性があるのは、右上の「躍進」だけだという感じですね。
佐久間 ほかのところにアドバイス以外の処方が必要なんじゃないかというところが、三好さんの問題意識ですよね。
三好 そうですね。もう2つだけお話していいですか?
佐久間 もちろんどうぞ。(笑)
「壁」の人たちの扱いが肝
三好 1つは、さきほども言ったんですけど、人は動くんですね。この4象限の中を。
たとえばスタートアップで考えてほしいんですけど、新しいことをやっているので、壁をぶち破ってなんぼじゃないですか。
佐久間 毎日壁ですね。
三好 新たな壁を自ら立ち上げ続けて突破していくのがむしろスタートアップだと思うので、組織が成長するにつれて、「躍進」にいた人たちも、社会的にみても難易度の高いアクションが求められる。「反応」の人たちも同じです。つまり、プロダクトのグロースに応じて、組織全体の人口分布が4象限の左側、「壁」と「停滞」ゾーンにスライドしていくことが往々にして起こるんです。
佐久間 間違いないですね。
三好 なので、この「壁」の人たちに対する扱い方がすごく重要なんですね。
あともう1つ言いたいことはマネジメントの仕組みについて。
組織が大きい会社だと、人事部がしっかりしているので、チームのマネージャーが「うちの部下をどうにかしてください」と報告しますよね。
その時点でその部下は既に「停滞」へ落ち込んでいる場合が多くて、もう為す術がない状態が大半です。「停滞」から引き上げられたとしても、一人あたりにとてつもないコストがかかる。つまり「停滞」に陥る前の「壁」「反応」の人たちを見極めるスキルや仕組みが組織にあると良いわけなんですけど、そうした組織はなかなかない。
現場でこの動きを食い止める、現場のマネージャーたちのコミュニケーションと関係性の質を上げていくスキルが実はすごく大事で。経営的な観点でも競争の優位性になるものだと思うんですよ。
組織の人数が50人から100人になって、マネジメントをする人たちが、「この人は今壁の領域に入っているな」「ちょっと落ちかけているな」と感じた場合、アドバイス以外にどういうコミュニケーションを取れるのか。
それが実はプロダクトとか組織のグロースに直結していると思っているんですね。
誰もがこの4象限を動き得るし、それを日頃関わっている同僚、マネージャーたちが、これに気を付ける必要がある。これまでの一般的な組織構造では、自然な引力として、誰もが「停滞」に向かっていってしまうと思います。
これを逆の方向に持っていくための「人間関係のあり方」が様々あるので、それを広められたらいいなって思っているんですよね。
佐久間 ティーチングやアドバイスは、「躍進」の人に役立つとお話されていましたが、私の感覚ではもうちょっとラジカルで、ほとんど役に立たないと思っています。
三好 なるほど。
佐久間 コーチングでその人の技量を引き出すのであれば、もう少し役に立つかもしれません。さらにもっといいのは、「実際に取り組んで失敗させる」というサイクルを、外側にいてつくってあげることだと思います。
三好 そうですよね。「失敗しても大丈夫だし、その体験から内側に何が生まれてもそれを安心して明かし合える」関係性が、人間が創造性を発揮する上で何よりの基盤だと思っています。じゃあアドバイスや指示命令以外にどんな選択肢があるのか、そしてその安心安全の関係性ってどんな風につくっていけばいいのかは、今後の配信で扱っていけたらと思っています。
佐久間 こういうお話は、具体例を交えてするのがすごくいいと思うんですよね。
自分たちの組織の状況をオープンに話せる人って少ないと思うんですけど、たとえば、amiの配信している起業家の方にいらっしゃれば、「三好サロン」みたいにお話できればいいですね。
三好 ぜひ。具体的なケースがあったほうが、もっとお話できますしね。
佐久間 三好さんにまた来ていただいて、直接、起業家の方と組織の悩みについて話すということもやってみましょう!