スタートアップの最新トレンドを毎週発信する「INITIAL Briefing」。 今週は、ピックアップニュース解説、Finance Reviewのコンテンツをお届けする。
ピックアップニュースでは、今年スタートアップで二番目に大きい時価総額(想定495億円)でIPOが予定されているウェルスナビの事例を紹介。FinTechスタートアップ調達環境の歴史を振り返り、資産運用スタートアップのEXITを展望する。
Finance Reviewでは、9月、10月の新規ファンド設立状況から、直近投資サイドで見られるトレンドについて解説する。
FinTechの雄、ウェルスナビが上場承認。INITIALピックアップニュース3選
「INITIALピックアップニュース3選」では、INITIAL編集部が選定する先週の抑えておきたい3大ニュースを解説する。
11月3週目のニュースで新規上場承認、資金調達ニュースを選定した。先週に引き続き、IPO承認のニュースが多く見られた。
ウェルスナビ、新規上場承認。想定時価総額は495億円
トップニュースはFinTech企業のウェルスナビ上場承認だ。資産運用を全自動化するロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」を開発・提供する。12月22日にマザーズ市場に上場予定だ。
想定時価総額は495億円と、今年のスタートアップ上場(予定)企業では、プレイドに次ぐ規模となる。
ウェルスナビは2015年4月に創業。2019年12月期の業績は営業収益15.5億円、経常損失0.2億円だ。2020年9月末時点では預かり資産2,892億円、運用者数は22.5万人を突破している。
同社は金融機関を中心とする提携パートナー企業と共に「WealthNavi(ウェルスナビ)」の顧客を開拓する。特にSBIホールディングス(SBI証券、住信SBIネット銀行など)への売上依存度が高く、2019年12月期は約4割を同ホールディグスからの売上が占める。ビジネスモデルは預かり資産手数料1%を徴収するほか、提携パートナー企業経由の場合は手数料を共同分配している。
同社のこれまでの累計調達額は103億円にのぼる。VC保有比率は55%を超えており、大株主にはSTRIVE、Infinity Ventures、グローバル・ブレインや前述のSBIホールディングス、SBIインベストメントなどSBIグループが名を連ねる。
FinTechは2013年以降に社数・金額ともに多く調達が集まったセクターである。その多くは2013~2015年に設立されており、ウェルスナビもその中の一社だ。2018年には調達額ランキング上位10社のうち半数がFinTechスタートアップであった(出所:Japan Startup Finance 2018)。
ウェルスナビと同時期(2013~2015年)に設立された資産運用サービスを展開するスタートアップは、Finatextホールディングス、お金のデザイン、FOLIO、One Tap BUY、クラウドクレジットなどだ。いずれも評価額は100億円を超えており、これまで数十億円規模の調達を行なっている。
資産運用サービスの業況はというと、株価を見れば2020年11月には日経平均は約29年ぶりの高値を更新するなど、市況は活況な状態だ。一方で、ウェルスナビは、まだ巨額の調達額の回収までには至っていない。
また、先日One Tap BUYがソフトバンク・みずほ証券の合弁会社化になったように、金融機関や大手通信・インターネット企業などの傘下に入るケースも選択肢に入るだろう。資産運用サービスを展開するほかのFinTech企業のEXITにも注目だ。
Kaizen Platform、新規上場承認。想定時価総額は170億円
ウェブサービスのUI改善・効率化プラットフォームを提供するKaizen Platformは12月22日にマザーズ市場に上場予定だ。想定時価総額は170億円で、2019年12月期の業績は売上高13.5億円、営業損失は1.5億円だ。
もともと同社は会社設立の2013年から米国に本社を置き、事業を展開していた。2017年7月に国内法人として組織再編している。
Kaizen Platformの株式43%はVCが保有する。大株主にはEight Roads Ventures Japan(以下Eight Roads)、STRIVE、SBIインベストメント、YJキャピタル、コロプラ、大日本印刷などの顔ぶれが揃う。
同社の第二位株主(保有比率16%)であるEight Roadsは創業初期の2014年から2回にわたり出資した。Eight Roadsは10月30日に上場したRettyに続き、プレイド、ヤプリ、Kaizen Platformと年末まで投資先の上場が相次ぐ。同社は米国大手資産運用会社フィデリティグループ傘下のVCだ。今後も投資先の動向にも注目だ。
ユニラボ、シリーズBで14.4億円の資金調達。新規事業展開へ
BtoB受発注プラットフォーム「アイミツ」を提供するユニラボはSpiral Capital、日本郵政キャピタルをリード投資家として9社から14.4億円の調達(融資含む)を行った。
同社の月額課金形式での顧客企業数はすでに約1,000社に達しており、今回の調達を元手に来春より本格的に新サービス「アイミツCLOUD」を提供する。このサービスでは受発注情報を一元管理することで業務効率化とともに発注先の比較を可能にする。
資金用途は今後1~2年間で新サービス立ち上げのため、エンジニア、ビジネス職を中心に100名程度の社員を採用する予定だ。
ユニラボは2012年にDeNA出身の栗山氏により設立された。2014年にリブセンスと共同で「アイミツ」事業を開始し、1年半で単月黒字化、3年目に通期黒字化を達成した。2018年にはリブセンスとの共同運営体制を終了し、ユニラボによる単独運営体制となった。なおリブセンスは事業の運営からは手を引いたが、株式を譲受している。
設立から約7年間外部調達を行わず、経営を行い、2019年にニッセイキャピタルなどから外部資金調達を実施した。今回のシリーズB調達により累計調達額は21億円となった。今後は新サービスリリースでさらなる成長を目指す。
ファンド設立動向:事業会社・VCの共同運用と業界特化型が増加
Finance Reviewでは、2020年9月・10月に設立されたファンドの動向と最近の傾向について解説する。
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