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2019/11/24

日本中の「コスト最適化」を目指す、経費削減SaaSの戦い方とは

  • #マーケットプレイス
  • #SaaS

あらゆる企業が抱える経営課題の1つ、「経費削減」。

A.T.カーニーのコンサルタントとして、さまざまな企業のコスト改革に従事していた大平氏は、2019年2月に経費削減SaaS「Lenaer(リーナー)」を立ち上げた。

経費の可視化から削減プラン実行までをサポートする同社。

しかし、彼らが目指すのは単なるSaaSではなく、日本のあらゆる経費を最適化する「BtoBサービスのマーケットプレイス」だという。

「法人版価格ドットコム」とも言える事業の構想について、大平氏に話を聞いた。

CONTENTS

巨大な「経費削減」市場で戦う、SaaSのユニークさ

大平 裕介氏(以下、大平)

「経費削減」とは何かを明確にするために、まず「経費」についてご説明します。

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大平 裕介(おおひら・ゆうすけ)/ 慶應義塾大学在学中、2社に創業メンバーとして参画。 慶應義塾大学卒業後、2016年にA.T. Kearneyに新卒入社。主にコスト改革(Strategic Sourcing・BPR)、事業戦略策定などに従事し、2018年に当時最速でアソシエイトに就任。 2019年2月、株式会社Leaner Technologiesを創業し、代表取締役CEOに就任。

一概に費用といっても、人件費や販促費、製造原価など、経費以外に様々な種類が存在しています。

その中でも、コピー紙や文房具といった、各部署が共通して利用する「間接材」の購入費用がいわゆる経費に該当します。

それぞれの費用については、たとえば人件費は人事部が、販促費は営業企画部が管理することが一般的です。

一方、経費管理の専門家がいる会社は少なく、「なんでも屋」の位置付けが強い、総務部や経営企画部が経費削減を主導することが多いんです。

(画像:Leaner Technologies会社資料より)

経営者から経費削減を命じられたとしても、具体的な施策が現場で確立していることは珍しい。

実際のアクションも、相見積もりの徹底を各事業部に働きかける程度なのが実情です。

Leanerは経費削減をどうサポートするのでしょうか。

大平 Leanerが提供する機能は、大きく3つに分かれます。

1点目は、経費を見える化する機能です。

所定のデータを送付していただければ、Leaner側で分析できる細かさに仕分けし、経費を見える化します。ユーザー側でデータを打ち込むことなく、「コピー費は〇〇円」といった形で経費をチェックすることができます。

2点目は、経費が「割高/割安なのか」を提示する機能です。

類似企業との比較や購買ビッグデータを元に、経費削減の余地を算出し、優先的に削減すべき経費を提示します。

そして3点目が、経費削減プランとオススメのサプライヤーを提案する機能です。

現在の調達・使用状況や他社の成功事例に基づき、最適な経費削減プランを提案します。

「経費削減」の市場は大きく、競合は多いのではないでしょうか。

大平 たしかにそうですね。

しかし、会社が抱える経費削減の課題と、それに対する提案内容は、従業員の規模によって変わると考えています。

(画像:Leaner Technologies会社資料より)

たとえばSAPや大手コンサルは、主に従業員が5,000人以上の会社を対象にサービスを提供しています。

実はその規模の会社からは、「経費削減プラン」だけではなく、それを実施するための「社内調整」も求められるサービスなんですよね。

従業員数が多い分、経費削減を実現するには多くの部署に協力してもらう必要になるからです。

一方、Leanerの主なユーザーは、従業員が5,000人以下の会社です。

この規模の会社の悩みは、「経費削減を社内でどう推進するか」ではなく、「経費削減をどこから進めるべきか分からない」という点にあります。

たとえば大手コンサルが、小規模な会社向けにSaaSを提供することはありえるのでしょうか。

大平 参入する可能性はゼロではないと思いますが、現実的には難しいと考えています。

「数人のコンサルタントが経費削減プロジェクトに従事し、課題を解決する」という、労働集約型のビジネスモデルから脱却し、システムを開発・提供する会社に変わる必要があるからです。

日本ではコンサルがカバーしている経費削減の領域は広く、従業員規模の大きい会社にとって、依然必要な存在であることは間違いありません。

しかし、労働集約型のビジネスのためコンサルティング費用は大きく下がりませんし、規模の小さい企業に提供することは難しいままです。

ターゲットと解決すべき問題が既存のプレイヤーとは異なるからこそ、Leanerは「SaaS」という形で、必要最低限の機能を安価に提供することに振り切っています。

freeeやマネーフォワードといった、クラウド会計サービスが経費削減の市場に参入する可能性はありませんか。

大平 その可能性は十分にあるでしょうね。

しかし、既存のクラウド会計はあくまで「財務会計のためのサービス」として開発されてきたので、そう簡単に参入はできないと考えています。

クラウド会計上では「事務消耗品費で○○円、通信費は××円」と、勘定科目ベースでのデータを取得することができますが、さらに細かい「コピー費は○○円、文房具費は××円」という数値をとることはできません。

請求書に記載されている、コピー枚数や単価といった全ての情報をアップロードしているわけではないからです。

結局、コピー費がいくらかかったかを調べるには、何万ものデータの中から「コピー費」にあたる費目を手作業で集計する必要があります。

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(画像:Atul Richardson / Shutterstock.com)

最終的に「コピー費は1枚当たり1.1円」だと分かったとしても、それが他社と比べて割安なのか、割高なのか判断する機能はクラウド会計にはありません。

その意味で、「経費の見える化」を提供できているSaaSはLenaerだけだと考えています。

2年後の解約を防ぐ、「経費削減の仕組み化」

経費削減プロジェクトは、一定期間で終わるイメージがあります。2年後の解約をどう防ぐかも重要な視点ではないでしょうか。

大平 たしかに、経費の購入内容や取引プランを見直すだけで終わるなら、2〜3年で経費削減をやり切ることは不可能ではないと思います。

しかし、経費の種類は1社あたり70〜80あるのに対し、経費削減を担当する社員は多くの場合数人程度。

これでは、全ての経費を2〜3年で削減しきることは不可能です。

逆に言えば、その間にLeanerが「経費削減のPDCAを回す仕組み」として活用されるようになれば、2年後も継続的に利用されると考えています。

Leanerの成約率は3割を超えるそうですが、何か特徴があるのでしょうか。

大平 Leanerの年間費用は60万円から、2年契約でご提供しています。

経費削減コンサルを利用した経験のあるユーザーからは、「値段が100分の1ですね!」と喜ばれることもあります(笑)。

この費用対効果の高さを評価いただき、導入社数が順調に増えているのだと考えています。

年間60万円という費用は、持続的な価格設定でしょうか。

率直に申し上げると、年間60万円の価格設定で黒字化を実現するのは難しいんですよね。

それでも今、この価格帯に設定しているのは、このフェーズはユーザーを増やし、取引数を大きくすることが重要だと考えているからです。

取引数が大きくなれば、Leanerに対して「コピー費が高いことが分かったので、コピー機のサプライヤーを切り替えたい」といった相談を受ける回数も増えます。

Leanerがサプライヤーを紹介できる回数も増えれば、サプライヤーも「Leanerのユーザー数は多い分、価格を安くしても利益を出せる」と思うようになってくれるんです。

その結果、ユーザーとサプライヤーの取引数が増えれば増えるほど、Leanerにもデータが貯まっていきます。

そのデータを元に、各ユーザーに最適なサプライヤーをマッチングさせる「経費のマーケットプレイス」になることが、Leanerの長期的な構想です。

(画像:INITIAL作成)

SaaSを起点として、マーケットプレイスを目指すわけですね。まずはユーザーの満足度を高めることが重要になりますか。

大平 そうですね。

Leanerの機能は、あくまでロジカルに経費削減のプランを出すことで、そのプランを実行は、ユーザーに委ねています。

その上で、現在のLeanerが高く評価されている機能としては、たとえば「経費削減の余地がない」ことを示すものが挙げられます。

なぜなら、経費削減を命じられたら、担当者が同じ費目を何度も相見積もりして「削減の余地なし」と証明する資料をつくることもあるからです。

一方、経費削減の余地があり、Leanerが「サプライヤーの切り替えをオススメします」と示した場合は、お客さん自身がサプライヤーと交渉する必要性があります。

交渉をよりスムーズに行えるよう、Leanerは「サプライヤーが分散しているので、これはまとめて買いましょう」といった提案も1つのサービスとしてご提供しています。

こうしたサービスを体験したユーザーからは、「法人版の価格ドットコム」のようだと言われることもありますね。

「サプライヤー」とはどのように関わるのでしょうか。

大平 Leanerには「サプライヤーが営業コストやマーケティングコストをかけずにユーザーを獲得できるか」をミッションとした「サプライヤーサクセス」という組織があります。

そもそも、コピー機や文房具をわれわれが提供することはできません。Leanerのビジネスはサプライヤーがいてこそ成立するという点で、アスクルやモノタロウといったサプライヤーは、Lenaerのクライアントだと捉えています。

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(画像:KoOlyphoto/ Shutterstock.com)

これまで議論する中で分かったサプライヤーの悩みは、営業やマーケティングに大きなコストがかかっていることでした。

たとえばコピー機メーカーは、それらのコストを回収するためにコピー費でお金を回収するビジネスモデルになっています。

しかし、彼らとして本当にやりたいことは、「コピー機能」のクオリティとサービスに対してお金をもらうことです。

「自分たちが価格を踏み込んでLeanerに提案すれば、他のサプライヤーから契約を切り替えてくれる」と考えてもらえるようになれば、不要な営業がなくなり、最適な「経費のマッチング」ができると考えています。

経費削減の「無加点主義」を変える

大平さんは、「経費削減が評価されない現状を変える」ことを目指しているそうですね。

大平 私がLeanerで経費削減に取り組むのは、それに取り組む人たちの評価基準を「加点主義」にしたいという思いがあるからです。

たとえば、コンテンツを作成する部署はPV数を上げれば評価され、営業部であれば売り上げによって評価されますよね。

しかし、経費削減を担当する部署は、ミスなく円滑に回ることが、価値として認識されてしまっています。

裏を返せば、加点ポイントが明確になっていない「無加点主義」になっているということです。

私がかつてコンサルとして総務の方とお話しする中で、「経費削減にチャレンジしても何の得もない」とお聞きすることが数多くありました。

「動かない」ことが一番効果的だからこそ、この負の状況に陥ってしまっています。

そこでLeanerが果たすべき役割は、定量的に経費削減の効果を出し、仕事の評価に繋げることだと考えています。

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(画像:wutzkohphoto / Shutterstock.com)

「1,000万円分の経費が削減できました。結果として利益率は5%になったので、2億円売上を上げるのと一緒です」と示す。

そうすればその数値を元に、上司も現場も経費削減を正しく評価することができるはずです。

Leanerがより普及するためには何が必要でしょうか。

大平 われわれが努力するだけでは、経費削減は実現しません。現場の方がモチベーションを上げて一緒に取り組めるかが非常に重要です。

そこでまず必要になるのが、「経費削減の結果を見える化して、働きが正しく評価がされる機能」だと思っています。

その上で、サプライヤーの契約切り替えだけでなく、「経費をそもそも発生させないために何ができるか」という視点もLeanerを通して提供していきたいですね。

その例の1つが、ユーザーの声を元に開発を進めている「ユーザーマネジメント」の機能です。

「このチームだけがタクシーに頻繁に乗っている」「この営業部はカラーコピーを使用する割合が高い」といった、経費削減につながる情報を見える化する機能で、全社的なアクションが可能になります。

このように、一言に経費削減といっても多様な取り組みがあります。

ユーザーが求める機能を1つずつ作り、経費削減の具体的な成果を出せる環境を整えることが重要だと考えています。

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聞き手:松岡遥歌、文:三浦英之、写真:INITIAL


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