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2019/09/21

町工場に変革を。次世代マーケットプレイス型組織「CADDi」の全貌

  • #マーケットプレイス
  • #製造

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」(キャディ)は、製造業の部品調達を変革するスタートアップとして、2017年11月に設立。

サービス提供から1年程でDCMやWiL、グロービス・キャピタル・パートナーズ、グローバル・ブレインといった大型VCから10億円の資金調達を実施し、サービスの導入社数は3,000社を超えた。

CEO加藤氏のマッキンゼー最年少マネージャーという経歴や、製造業が抱えてきた積年の課題へのインパクトの大きさに注目が集まることも多い同社だが、特徴はそれだけに留まらない。

「2019年頭から、数百人体制を見据えた組織を始動している」と語る加藤氏に、CADDiのビジネスモデルと技術、そして「2つのカスタマーサクセス」を持つ独自の組織構造について話を伺った。

話は詳細に至り、本記事は1万字を超える。最後には、CADDiには加藤氏と補完関係がつくれるキングダムの桓騎(かんき)のような人物が必要だということにまで話は及んだ。

CONTENTS

CADDiが変える、製造業の「見積もり地獄」

サービスの説明をお願いします。

加藤 CADDiは製造業の受発注プラットフォームとして、部品を発注する方と町工場をマッチングするサービスです。

加藤 勇志郎(かとう・ゆうしろう)/ キャディ株式会社 代表取締役 東京大学卒業後、2014年にマッキンゼーアンドカンパニーに新卒入社。2016年に同社マネージャーに就任。製造業の全社調達改革領域及びIoT/AI領域をリードするほか、グローバル戦略構築、新規事業策定などに従事。同分野への課題意識から2017年末にキャディ株式会社を創業。

発注者が部品の図面(3D CADデータ)をCADDiにアップロードすると、平均7秒という早さでリアルタイムに解析し、自動で見積もりを出します。これまで数週間かかっていたものが瞬時に出る。もちろん、見積もりを出した後にすぐに発注もできる。

発注する製造業者の方にとって、この部品発注までの「早さ」が1つ目の価値です。

裏側の仕組みとして、部品の図面がアップロードされると、全国160のパートナー工場の内、どこがその部品の製造が得意か、何円で製造できるかを計算して、最適に発注が分配されています。

そうすることで、最適な価格が実現できる。結果として、大体2割位調達コストが下がります。この「安さ」が2つ目の価値になります。

逆に、受注する町工場の方にとっては、一切相見積もりの手間なく受注できることがメリットですね。通常、相見積もりされているので、見積もり作成後に受注まで至るのは2割くらいしか無い。そのような「見積もり地獄からの解放」という価値があります。

もう1つのメリットは、「必ず利益が出せる」こと。これは各町工場の部品ごとの原価を把握し、我々が黒字保証をしているからです。日本の中小メーカーは73%が赤字だと言われていて、過去30年で半分以上が潰れている。その大きな問題を解決できます。

(画像: CADDi会社資料よりINITIAL作成)

発注する製造業者の方、受注する町工場の方、両方にとって価値になるのは、「取引の安定性」ですね。発注側、受注側を束ねることで、取引を安定化させ、事業の予測性を向上させることができます。

発注する製造業者の方、受注する町工場の方、双方にとってのCADDiの価値が非常に明確ですね。

加藤 はい。受発注の問題そのものにまず取り組んでいますが、その周辺にも「負」が多く存在しています。最終的には周辺領域の「負」を解消する事業にも取り組んでいきたいと考えています。

板金加工や切削加工という現在我々が取り扱う分野も広げていき、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」という我々のビジョンに近づけていきます。

この発注側、受注側の双方にとっての「価値」を実現するCADDiの組織構造について詳しく教えてください。

加藤 CADDiは大きく分けて4つの本部があります。カスタマーサクセス本部、サプライパートナーサクセス本部、テクノロジー本部、コーポレートプラットフォーム本部です。

(画像:INITIAL作成)

コーポレートプラットフォーム本部はいわゆるコーポレート部門で、人事や総務、経理、広報の機能を持っています。テクノロジー本部はアルゴリズムをつくる部隊、形状解析を行う部隊、そしてCADDiのWebプロダクト部分を担当する部隊に分かれます。

テクノロジー本部とコーポレートプラットフォーム本部はIT企業では一般的に見られる組織かと思いますが、CADDiは2つのサクセス本部があるのが特徴的ですね。

加藤 カスタマーサクセスの目的は「より多くCADDiに発注いただくこと」、サプライパートナーサクセスの目的は、「より多くCADDiから製作を依頼すること」です。

少し耳慣れない言葉だと思うので改めて整理すると、「カスタマー」とは発注者のことで、例えば、電車を製造するための部品を発注する電車車輌メーカーだと考えてみてください。

一方の 「サプライパートナー」は、電車車輌メーカーから依頼を受けた部品を製作する町工場をイメージするとわかりやすいと思います。

(画像:INITIAL作成)

SaaSの組織構造と非常に似ていますね。SaaSはサブスクリプションなので、ユーザーの解約を防ぐことが生命線。そのためにカスタマーサクセス部隊がある。CADDiの場合、取引が継続的に発生しないと実態的に「解約」となってしまう。解約を防ぎ、アップセル(より多く受発注すること)を実現するために、2つの本部があるんですね。

加藤 当初は、マーケットプレイス型組織はSaaS型の組織とは大きく異なると思っていましたが、自分の理想を追求し、SaaSのプラクティスを学び取り入れる中で、このような組織構造になりました。

両側の顧客の成功を定義し、そこにまっすぐ向き合う部門をつくることは、ビジネスとして本質的なアプローチができていると感じます。

カスタマーサクセスが実現する「楽に・早く・安く」

発注者の成功を目指すカスタマーサクセス本部は、どのようなチーム体制になっていますか?

加藤 3つのチームから構成されています。

(画像:INITIAL作成)

前段階としてマーケティングとインサイドセールスが見込み顧客を獲得した後からが、カスタマーサクセスの出番となります。

基本的には、アカウントセールスとアカウントマネージメントの2つのチームが発注者とのやりとりを担当するのですが、それぞれ発注者との関係性に従って役割が変化します。

利用を検討していただき、CADDiの利用を開始する段階までは、アカウントセールスがメインで動きます。発注者に対して営業を行い、スムーズに利用していただくまでサポートします。

一方アカウントマネージメントは、導入後も継続的に使っていただき、発注者のニーズに合わせて発注規模や製品の種類を増加させることが役割になります。

まず発注者側は特定の部品で試して、「安く・早く・楽に」調達できることを確認し、その後CADDiを通して発注する部品を徐々に増やしていく。その関係性をアカウントセールスとアカウントマネージメントが築くわけですね。

加藤 その通りです。そしてこの2つのチームに加え、「見積もり」自体をサポートするオペレーションシステムチームがあります。

発注者からいただいた図面が3D CADデータであれば全自動で受注を処理するのですが、二次元の図面だと話は別になります。

同じ原価計算のエンジンを使ってはいるものの、二次元の図面の場合、形状を認識する作業は人間が行う必要があるんですね。その役割を担うのがオペレーションシステムです。

CADDiのカギは3D CADデータを解析して自動で見積もりを作ることですが、発注図にも様々なパターンがあるので、システムで解析できるよう人が介在する場合もある。この仕組みだけでもビジネスとして成立しそうですね。

加藤 「CADDiの見積もりシステム自体を売ってもらえないか」という話もいただくことがあるんですよね。いかに見積もりが現場の負担になっているかが分かるエピソードだと思います。

こうして複数のチームから構成されていますが、そもそも発注者の不安は何かと言うと、部品によって製作難易度も変わるので、いきなりCADDiに全て発注することはできないということなんです。

ときに調達担当者は数千点を超える部品の調達を行なっていますから、それほどの部品数を最初からCADDiに任せることに、リスクを感じる場合もあります。

例えば、電車車輌メーカーが電車1台作る上で調達すべき部品はおよそ1万点あり、それを5〜10人程度の少人数で担当しているんですね。さらに細かく見れば、電車に使われるシートも分解すれば数十点の部品からできているわけです。

(画像: CADDi会社資料より)

同種の部品を大量に調達する場合に比べると、少量多品種の部品を「早く・安く・楽に」調達することは非常に難しい。そうした背景もあり、実はお客様に一番喜ばれているのは、CADDiが持つ町工場のネットワークにまとめて依頼できるという点です。

まずは少量からCADDiのメリットを安心して感じていただき、徐々にCADDiの利用頻度を高めてもらうことがカスタマーサクセスにとってのゴールです。

発注者に1億円の調達予算があったら、1億円分全てCADDiに依頼いただくことが、最高レベルでのカスタマーサクセスの実現だと言えますね。

カスタマーサクセスは通常1チームが担当しているイメージですが、3つのチームでそれぞれの機能を持っているのがユニークな点ですね。どういった人材がマッチするのでしょうか。

加藤 たとえば、CADDiでアカウントマネージメントを担当しているメンバーの中には、事業責任者としての経験がある者もいます。

発注をいただいてから最終的に部品をお届けするまで、長い工程が存在するため、事業全体を管轄していた経験を活かした好例だと思います。

また、先ほど述べた通り、CADDiのカスタマーサクセスは、SaaSにおけるセールスやカスタマーサクセスに近い要素があります。

SaaSのカスタマーサクセスで運用されているように、CADDiにおいても「解約率」と「顧客単価向上」をカスタマーサクセスのKPIに置いています。数ヶ月サービスが利用されていなければ「解約」、発注量が増えれば「顧客単価向上」と見なし、CADDi独自の定義で運用しています。

自動見積もりテクノロジーと、ユーザーをサポートする組織の2つを追求する姿勢は「ユーザーに提供する価値に誠実に、長期的に向き合い続ける」というSaaSの文化と通ずるものがありますね。

そうですね。SaaSでのキャリアをお持ちで、KPI達成のためのスキルやナレッジを持つ人はCADDiでも活躍できると思います。

実はアカウントセールスは外回りで動くことが多いのですが、それは「この部分まで発注を任せて大丈夫だろうか?」というお客様の不安を解消するには、対面によるコミュニケーションも重要だと考えているからです。

たとえば初回の発注が無事終わったあと、「この発注を無事クリアできたので、次はこれをチャレンジしてみませんか?」というコミュニケーションを直接行うことも、関係性を深める上では必要だと思います。

(画像: CADDi会社資料より)

スタートアップの多くはまずは東京だけでビジネスをスタートさせます。しかしCADDiの場合は少人数で、全国にいるお客様と直接コミュニケーションを取らなければならない。

加藤 たしかに東京のスタートアップであれば、大多数のお客さんが関東に集中していて、コミュニケーションコストがそれほどかからない場合が多いですよね。

しかし我々のお客様である製造業についていうと、関東、関西、そして愛知と静岡で8割程度のシェアがあります。

関東と関西を比べると市場規模はほぼ同じですし、むしろ関西のほうが大きいという説もあるぐらいなので、CADDiを立ち上げた最初からどちらもアプローチをしていました。

実際に、CADDiの大手のお客様として最初に利用いただいたのは、関西の企業だったんですね。

現在アカウントセールスは、関東と関西に加え、今年の7月からは中部にも展開するなど、各地域にそれぞれ担当がいますが、今後もどんどん人数を増やして全国のお客様をカバーしていきたいですね。

「利益の砦」、サプライパートナーサクセス

次に、受注する町工場の方の成功をサポートする、サプライパートナーサクセス本部についてお聞きしたいと思います。

加藤 サプライパートナーサクセスも構造は同様で、基本的に3つのチームで構成されています。

(画像:INITIAL作成)

サプライパートナーサクセスは、「CADDiのサプライチェーンの全体最適」を実現させるチームです。

ここでいう全体最適とは何か。CADDiを用いてメーカーが部品を100点発注するケースを考えてみましょう。

この調達を最適に行う上では、部品100点を1つの町工場に全てお任せするのではなく、5社や10社に分けて発注することがあります。それはなぜかと言うと、町工場ごとに強みが大きく異なっているから。

「ある部品はグレーで塗ってほしい」という要望があれば、グレーでの塗装に強みがある工場に集約したほうがコストが一気に下がりますし、受注した工場も利益が取れます。

このように様々な情報を組み合わせ、発注者、受注者双方にとって最適なサプライチェーンをどう実現させるかをサプライパートナーサクセス全体で考えているんですね。

その目的に向かって3つのチームがどう動いているのか、まずサプライパートナーディベロップメントの特徴を教えてください。

加藤 我々のパートナーとなる町工場を開拓するのがサプライパートナーディベロップメントです。

各町工場の強みや製造コストを把握して、最適なサプライチェーン構築に必要な情報を把握する役割があります。外部調査や社長インタビュー等で強みを見極め、空いているピースを持つ企業を積極的に開拓していきます。

たとえば、ある町工場さんが特定のメーカーからの発注に依存しているというケースを考えると、その工場は「自分達の強みはそのメーカー向けの技術」と思っているんですが、実は違うんですよ。

1つのメーカーから発注される製品にも色々な種類がありますから、どの加工技術に強みがあるかは、メーカーというより部品の種類によるところが大きいんです。

最初からそれぞれの工場の実態を把握できるわけではないため、まずは少量発注して、強みである技術や製造コストの見極めを行います。

既に利用いただいている他の町工場と比較するために、工場稼働率も把握しておく必要がありますし、実際に発注者まで部品を届けるという観点から、最終的な物流コストがいくらになるかも計算しなければなりません。

「一定レベルまで強みとコストを見極めなければ次のプロセスに移れない」というルールをサプライパートナーディベロップメントが徹底しているからこそ、最適な取引をスタートさせることができます。

この仕事にマッチするのは、メーカーで発注を担当していた人などでしょうか。

加藤 そうですね、メーカーや商社で調達関係の仕事を担当していた人がイメージに近いかもしれません。ただ、調達についてだけではなく、サプライチェーン全体についての知識も求められるので、分析業務に強みがあるコンサル出身の方も向いていると思います。

次にサプライパートナーコミュニケーションの説明をお願いします。

加藤 町工場の方との関係ができた後も、お互い全てを把握しているわけではないため、すぐに「何でもお任せします」とはなりません。

CADDiを通して徐々に受注量を増やしていただけるよう、パートナーとの関係性を築くことがサプライパートナーコミュニケーションの役割です。

また、CADDiが算出した見積もり価格と実際の製造コストがずれるケースも発生してきますから、変化する町工場の原価計算を紐解き、その結果を見積もりアルゴリズムにフィードバックしていく頭脳的な役割もあります。

CADDiの持つ原価計算のロジックは世界でもトップクラスに細かいレベルなので、そのロジックに入れる情報を把握することさえできれば、正確に原価を算出できます。

原価計算の正確さが利益に直結するという意味で、サプライパートナーコミュニケーションには「利益の砦」としての役割があります。

CADDiの収益はシステム利用料ではなく、売り手と買い手を仲介するマージンによるものです。たとえば町工場から75円で購入したら、発注者に100円で売り25円の利益を得る、というモデルです。

サプライパートナーディベロップメントに似ている部分もありますが、原価計算のアルゴリズムを把握し分析することが求められます。

しかし製造業のサプライチェーンに仕事で関わった経験のある方は中々いないので、人材を集めることの難しさを感じますね。

クオリティ&デリバリーは何を担当しているのでしょうか。

加藤 このチームは、お客様にお届けする製品の品質と納期を担保しています。

お客様のニーズを満たす品質であるか検査を行い、納品するまでのスムーズなオペレーションを実現することはもちろんのこと、定期的に現場を訪問して、CADDiがお願いした事項を守っていただいているかを確認しています。

(画像:Kzenon / Shutterstock.com)

これまでの品質評価は人間的な感性に頼っていた部分があると思うんですが、CADDiはその評価も科学的に行えると思っています。

発注者のつくる図面データにも様々な書き方がある一方、加工工場さんにも色んな強みがあります。その両者を マッチングした時にどういう品質不良が起こるかデータ化し、再現性高く不良率を下げることに挑戦しています。

整理すると、この3チームが連携することで、「高単価で・早く・安定的な受注」という町工場の方のニーズを担保しているわけですね。

加藤 CADDiの利益は発注者と町工場を繋いだマージンによって生み出されるため、3者の黒字を実現させるためには、精緻な原価計算に基づいた取引をする必要があります。

だからこそ、サプライパートナーサクセスは我々CADDiの利益を司る部門として重要なんですね。

営業的な目線に加えバリューチェーン全体の目線が求められるという、視野の広さがサプライパートナーサクセスチームの独自性だと思います。

独自の組織と調和するテクノロジー

2つのサクセスチームが特徴的な分、テクノロジー本部が担う役割も多岐に渡るのではないでしょうか。

加藤 テクノロジー本部は、主にCADアルゴリズム、QCDアルゴリズム、プロダクトの3チームに分かれて構成されています。

CADアルゴリズムはかなり研究的な側面がありますから、先進的な技術として3D CADデータの形状解析や工程分解について取りあげていただくことも多いです。しかしその後工程としての、サプライチェーンを最適化させるアルゴリズムも強みだと思っています。

(画像: CADDi会社資料より)

2つのサクセスチームの役割の複雑さからもわかるように、CADDiでは様々なオペレーションが発生しています。

発注者から社内、そして町工場までの一連のやり取りがスムーズに進むよう、サービスのUIを改善するだけでなく、その過程で生まれた複雑かつ大量のデータについても、テクノロジー本部が担当して整理しています。

そういった希少な人材はどうやって採用したんですか?

加藤 あくまで一例ですが、日本で一番有名な競技プログラミングの大会スポンサーになり、「キャディはそういうアルゴリズムに強みがあるのか」といったブランディングを行いつつ、認知度を高め採用につなげていきました。

ただ、アルゴリズムとしての強みをアピールしてきた一方、それ以外のフロントエンドやバックエンド側の人材の必要性を訴え切れていなかった部分があったので、エンジニア専用の採用サイトもこの前オープンしています。

CADDiとしてやりたいことは受発注プラットフォームの開発以外にも沢山ありますから、その実現にはテクノロジー本部のメンバーを増やし、さらなる進化を果たすことが必要不可欠ですね。

CEOが組織に求める、意外な人物像

ここまで組織の特徴をお聞きしましたが、組織をつくり、牽引する加藤さん自身についてもお聞きしたいと思います。加藤さんの弱みと、それを補ってくれるメンバーとしてどういう人が必要でしょうか?

加藤 弱みは沢山ありますが、大きく2つあります。

1つ目の弱みは、すごい尖った得点を叩き出すというより、高い平均点をとってしまうということです。自分で言うのも何ですが、前職では「全部95点!」って評価されていたんですよ(笑)。

95点取れれば十分じゃないですか(笑)。普通の方は全部70点などと言いますよね。

加藤 確かに「自分で言うな」という感じですね(笑)。しかし、事業を圧倒的にグロースさせるためには、1つの分野で200点をとる人材が必要だなと強く感じています。各部署に、その分野で際立った才能を持つ方にジョインしてほしいですね。

レアケースだとは思いますが、CADDiで今すごく活躍しているのは、製造業バックグラウンドを持ち、リクルートで事業開発をしてきたという様な人材です。

製造業の営業を経て、メガベンチャーなどで事業開発に携わって来た人や、コンサルでバリューチェーンの分析などを行なっていた人は、その際立った特徴を活かせる環境があると思っています。

もう1つの私の弱みは、色々なことを全部自分でやろうとしてしまうことです。

CADDiの仕組みが非常に煩雑で変数が多い分、事業を成長させるためにやれることが自然と考えついてしまいます。そうすると、自分で整理して何でもやりたくなってしまうんです。

それでも今は意思を持って、「ここに集中する」と言い切ることがすごく大事だと思っています。

自分がコンサルとして歩んできたキャリアの影響もありますが、全てゼロベースで考えるのが良いところでもあり、悪いところでもあると思うんです。

たとえば複数の企業で事業開発を経験してきた人であれば、「今はここに集中すべきだよね」という勘所があると思います。そういった方と一緒に議論して、CADDiをより進化させたい。

何でもやりたくなる分、どこにフォーカスすべきか伝える人が必要ということですね。直感で物事を決めて動かしていけるような人がイメージに近いでしょうか?

加藤 「それ、要らないよ」と言える人はすごく重要だと思いますね。

マンガのキングダムが大好きなんですが、キングダムには多くの武将が登場します。楊端和(ようたんわ)のような野生型、蒙武(もうぶ)みたいなパワー系、カリスマ性のある王翦(おうせん)みたいに、様々なタイプのキャラが揃っていますよね。

今のCADDiには桓騎(かんき)みたいな自分の直感を頼りに、何が何でも突破してしまうようなタイプの人がいないんです。今後成長していくには、そういう人が絶対に必要だと思っています。

本能型の筆頭と言われる麃公(ひょうこう)ではなく、あえて桓騎(かんき)だと。独創的なアイデアと野性的な強さで一点突破していくタイプが必要だということですね。

加藤 そうですね(笑)。ただ、程々でセーブしてもらわないと組織が崩壊してしまいます。 そのセーブ力は僕が担い、バランスをとって事業を進めることが、チームとして望ましい関係といえるんじゃないでしょうか。

そういったメンバーと一緒に、今後CADDiをどう成長させていきたいでしょうか?

加藤 見積の煩雑さ以外にも、製造業で解決すべき課題は数多くあります。

今展開している受発注プラットフォームの先の構想としては、生産管理ツールやファクタリング(売掛債権を買い取って、債権の回収を行うサービス)の提供等の展開も考えています。

たとえば生産管理ツールを提供し、それぞれの町工場のキャパシティを完全に把握できる様になれば、空いている設備にすぐ発注ができる様になりますよね。

また、町工場は商品を届けた後に入金される時間が長いため、価格が安くともすぐ入金してくれる発注者を選んでしまうという課題もあるのですが、ファクタリングの提供でこういった町工場の悩みをなくせると思っています。

(画像: CADDi会社資料より)

このようなアプリケーションサービス網の拡大に加え、グローバルでの展開も進めていきたいと考えています。

たとえばアジアでは小規模工場と巨大工場の差が大きかったり、アメリカにはJOB SHOPと呼ばれる中小製造業が存在するなど、地域ごとに様々な形態の製造業が存在しているんですね。

最終的には、そういった文化・形態の違いを乗り越えてCADDiを広めていきたいと思いますが、そのためにはまず、日本で一定のGMV(Gross Merchandise Value:総流通総額)規模を達成することが重要だと考えています。

このステップを着実に踏み、グローバルに「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というビジョンを達成していきたいです。

聞き手:佐久間衡、文:三浦英之


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