本記事では、景気下降局面におけるIPO動向と、不況期を乗り越えて成長する企業の特徴を過去の歴史を振り返って解説する。
リーマンショック前後にマザーズに上場した企業のうち、時価総額500億円以上を維持しているのはわずか5社。そのうちZOZO、エス・エム・エスの2社は、上場時から10倍以上の成長を遂げている。一方で、華々しい上場後に上場廃止になった企業や成長が見えない企業もみられた。
景気下降局面で生き残る企業、淘汰される企業の特徴は何か。不況期と好況期のIPO動向の違いも解説し、景気下降局面における投資環境の3つの変化について見通しを提示する。
過去の景気下降局面は上場数減少後、マザーズが牽引役へ
景気の変動は上場数にどう影響を与えているか、2007年から2019年における東証への上場数推移を見てみよう。
2007年は83社が東証へのIPOを果たしたが、リーマンショックの影響を受け2008年と2009年のIPO数は激減し、2009年には、2007年以降最も低い数値となる18社まで落ち込んでいる。景気下降局面においては上場数も大きく減少し、回復までには数年の時間がかかったことが分かる。
先月のExitReviewでは、新規上場を中止した企業数がリーマンショック以来過去最多の19社になったことを伝えたが、今後も上場を控えるトレンドは続き、上場数が回復基調に転じるまでには少なくとも1年以上の時間を要すると考えられる。
一方、2010年から上場数は徐々に回復し、2014年以降は毎年80社~90社前後で安定している。その牽引役となったのがマザーズだ。
特に2011年から2014年にかけてマザーズ上場数が大きく増加している。これはアベノミクスによる株式相場の上昇だけでなく、新興市場の活性化に向けた制度改正や見直しも背景にある。
東証は2011年3月に「マザーズの信頼性向上及び活性化に向けた上場制度の整備」に向けた取組みを施行。上場審査手法の変更や上場審査プロセスの効率化等を行った。また2014年3月には金商法が改正され、新規上場時の開示資料の軽減や最低株主数基準の引き下げ等を通して、新規上場の推進が図られた。
市場改革の動きは現在も見られ、東証は市場区分を現在の1部にあたる「プライム市場」、中堅企業の「スタンダード市場」、スタートアップを中心とする「グロース市場」の3つに再編し、2022年4月に一斉移行することを目指している。
市場再編等の上場環境の整備が、落ち込んだ上場数にどう影響を与えるかも引き続き注視したいポイントだ。
景気下降局面後も成長を持続する企業の共通点
次に、景気下降局面で成長を持続する企業と淘汰された企業の特徴を解説する。
無料トライアルに申し込むと、すべてのコンテンツをご覧になれます。