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2019/12/23

大手人材企業からのスピンオフ。MyRefer創業者が語る、「社内起業」の道筋

  • #起業ストーリー
  • #HRTech
  • #SaaS

「インテリジェンス入社時から、2年で辞めてスタートアップを立ち上げるつもりだと正直に話していました」

こう語るMyRefer代表の鈴木貴史氏は、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒で入社後、社内ベンチャーとしてMyReferを創業し、MBOによりスピンオフを果たした。

スピンオフとは、社内の事業を切り離し1企業として完全に独立させる手法を指す。SHOWROOMやミラティブがDeNAからスピンオフしたように、日本でも徐々に起業の手段として事例が見られるようになってきた。

インテリジェンスという巨大組織の中でどのように事業を立ち上げ、スピンオフを成し遂げたのか。鈴木氏へのインタビューを行い、社内起業の実情を聞いた。

※本記事は、以前noteで公開した記事を再編集した内容です。

CONTENTS

鈴木貴史氏(以下、鈴木) 「会社とつながる全員をファンにする」をコンセプトに、リファラル採用のプラットフォーム「MyRefer」を運営しています。

リファラル採用とは、社員の知人や友人を紹介・推薦してもらい、選考する採用手法のこと。

今は求人情報や履歴書に書かれた表面的な情報よりも、リアルな情報に価値がある時代です。信頼できる人脈を介した採用活動こそ、個人と法人のポテンシャルを最大化させると考え、MyReferを運営しています。

なぜ「リファラル採用」を事業領域として選んだのですか。

鈴木 前職のインテリジェンスでは、大企業からスタートアップまで、幅広く採用のサポートを行っていました。その中で、「本質的なマッチングが起こっていない」ことが課題だと感じていました。

なぜ、「本質的」ではないのか。それは双方が「化粧」をしているのが当たり前になってしまっているからです。

法人側は必要以上に「アットホームな職場」をアピールし、一方の転職者は「MVP」の受賞歴を強調する、といった例がイメージしやすいのではないでしょうか。

情報過多の現代、求人情報だけで差別化を図ることは難しくなってきています。このままでは人材の最適配置や流動化は進みません。

そこで私は、社員自らが行う「リファラル採用」こそ、採用の競合優位性を担保できると考えました。

しかしリファラル採用の運用には、リクルーティング情報を社員に認知させ、紹介制度設計を行う必要があるなど、手間がかかります。

われわれはユーザーの運用状況を徹底的にヒアリングすることで、簡単に・楽しくリファラル採用を運用できるサービスを作っています。

インフラを創るうえでの最短ルートが社内ベンチャーだった

起業はどのタイミングで考えるようになりましたか。

鈴木 私は600年以上続くお寺の出身のため、一般的な家庭よりもルールに厳しい環境で育ってきました。

その環境にいる中で、「自分自身の存在意義を世の中に発揮して、ルールメイキング側に回りたい」といった反骨精神が徐々に生まれてきたんですよね。

高校生になる時には、「アーティストになるか、起業するか」の2つを将来の進路として考えていました。

実はバンドのボーカルをやっていて、人気グループのボーカルオーディションで3万人から300名の枠に選抜されたこともあったんです(笑)。

しかし、アーティストの領域では、必ずしも良いコンテンツがリアルタイムにヒットするものではないと感じていました。

たとえば「歌がうまい」ことはヒットするための十分条件ではなく、ほかの要素にも左右されます。リアルタイムではなく死後に作品の価値を認められるアーティストも多々います。個人的にそれは本質的だと思えませんでしたし、納得しがたいものでした。

一方、ビジネス領域においては、良いコンテンツであればほぼリアルタイムに流行します。

たとえばFacebookが誕生したのはわずか10年程前ですが、今や巨大プラットフォームとして、世界中でインフラとして利用されていますよね。

そう考えた結果、一度しかない自分の人生にベットするのであれば、自分が本質的に腹落ちしている領域がいいと感じるようになり、ビジネス領域にフォーカスしようと思うようになりました。

そしてスモールビジネスではなく、世の中にこれまでなかった新たな概念を生み出し、インフラを創る起業家になりたいと考えるようになりました。

すぐに起業せず、インテリジェンスに新卒入社したのは何故でしょうか。

「起業」と「入社」は、相反するものとは思っていません。当時の僕はインフラとなるビジネスを自分でつくり、スケールさせる力はありませんでしたから。

インテリジェンスは今でこそ仕組み化された大企業ですが、自分が入社した当時は、起業家の登竜門のような雰囲気がありました。

インテリジェンス創業者であるUSEN-NEXT HOLDINGSの宇野さんや、サイバーエージェントの藤田さんなど、自分が目標としていた名だたる起業家のルーツということも大きかったです。

要は人材サービスの分野に興味があったのではなく、「インフラとなるビジネス・会社を創る」目標から逆算した選択でした。

インテリジェンス入社時も「2年で辞めてスタートアップを創業しますけど、それでもよかったら内定出してください」と言っていました。

こんなビッグマウスによく内定を出してくれたな、と今でも思います。

結果的には、2年後に社内ベンチャーとしてMyReferを創業する決意をしました。

営業として現場を見ている中で、日本のHR市場は海外と比較して非常にガラパゴス化していると感じていました。人事部はマーケティングではなく管理部と位置づけられ、採用は外部のエージェントや求人広告にお任せする形になっている。

そんな中、全く新しい概念の採用手法を日本のHR市場に浸透させるには、プロダクトドリブンで人事部にアプローチをするだけでは難しいと考えました。インテリジェンスの3,000名の営業リソースを活用してマーケットの啓蒙をしたほうがインフラを創るうえでの近道だと思い、2015年に社内ベンチャーとしてMyReferを創業しました。

社内ベンチャーでイノベーションを起こす難しさとは

実際に社内ベンチャーを立ち上げて、どこに難しさを感じましたか。

鈴木 よく言われる「イノベーション」と「シナジー」のジレンマだと思います。

たしかに社内ベンチャーは、社内リソースを活用して事業を立ち上げられるという点で、創業期に市場を創るうえではメリットがあります。

しかし、新たなインフラとなる新規サービスは必ず既存のマーケットを破壊してイノベーションを起こすものです。事業会社はトップラインを伸ばす上では既存のマーケットを維持するほうが重要なので、どこかのタイミングで大手を振ってその新規事業を推進しづらくなるタイミングが来ます。

これは起業家が事業推進するうえでの市場からの見られ方も然りです。

「あの大手事業会社の付随サービスなのに、既存の主力事業と逆行するビジョンを掲げてやるってどういうことだ?」となりますので。

また、社内ベンチャーに対して設定される目標は、「1年で単月黒字」のような短期的な数値です。

しかし、スタートアップがスケールするには、最初の数年は赤字を覚悟して事業を展開する必要があります。

創業期から黒字を意識しすぎると、販管費を削減してSaaSのみでなくコンサルに比重を置いて単月黒字を繰り返す構図になるので、本質的なプロダクト開発が難しくなります。

黒字化の目標に反して、社内ベンチャーとして、赤字を貫き通す難しさは常に感じていました。

スピンオフ未経験者による「MBO」のリアル

その後スピンオフを行うわけですが、いつ意思決定を行ったのでしょうか。

鈴木 1年目の単月黒字は何とか達成し、2年目も一定成長はしたものの、自分が本当に描きたいシナリオとのギャップが生まれていました。

その時の選択肢は2つ、「プロダクトを置いて外に出るか、プロダクトとともに外に出るか」でした。

当時、MBOやスピンオフの見識はお持ちだったのでしょうか。

鈴木 当然ありませんでした。(笑)

MBOの実例は基本的に世の中に出ていませんし、「スピンオフ?カーブアウトと何が違うの?」状態からのスタートです。

しかもインテリジェンスの歴史上、MBOやスピンオフの前例もほとんどなかったので、半ば諦めていました。

そのため外に出てゼロから再度事業を構築する準備を進めていたのですが、当時のパーソルホールディングス副社長から声を掛けられてから、潮目が変わり始めました。

インテリジェンスは、これまで多くの起業家を輩出していました。しかしその一方で、「オープンイノベーションを加速させる、新しい独立の形をサポートしてもいいのではないか?」とも考えていたんです。

「サポートできることもあるだろうから、いくつかディールのモデルを考えてほしい」と言われてからは、自分で勉強しつつ、M&Aやファイナンスのプロにも事例を聞き、最短でキャッチアップしました。

この経験のおかげで、世の中のM&A、MBO案件の仕組みは理解できるようになりました。思わぬスキル開発でしたね。

大きな労力が必要だったと思いますが、モチベーションはなんでしたか。

鈴木 結局は自分の原点である、「世の中にゲームチェンジを起こしたい」欲求の強さがモチベーションだったと思います。

個人的には、巨大事業会社で100億円の事業予算を使って大きなビジネスをやっていたとしても、あまりカッコいいと思わないんですよね。

「その会社だから出来たのでは?」と感じてしまうからです。

それと同様に、「MyRefer」を紹介したとしても、ユーザーからすれば大企業であるインテリジェンスの1サービスにしか見えない。

やはり世の中に爪痕を残すには、この船から出て自分達の名前でビジョンを提唱するしかないと思ったんです。

正直に言うと、あまりに大変なので二度とやりたくないですけどね。

スピンオフしたあと、何に苦労されましたか。

鈴木 社内起業の時と比べても、やってることは何も変わらないので難易度は一切変わらないと思います。

実は資金調達にしても、スピンオフ後の方がしやすかったです。

むしろ、社内ベンチャーのCEOの方が経営管理力や組織構築力は養われる可能性もあります。大企業の役員相手に毎週細かな予実を報告して、ブレない事業推進をしているので。

そういう意味で最初からスタートアップを創業するケースと比較して、事業推進におけるアドバンテージがあったので、スピンオフ後も違和感なく進められています。

唯一大変だったのは、間接コストについてです。

社内ベンチャーは独立採算とはいえ、法務や労務、財務管理といったバックオフィス部門を本社が担うケースは多いと思います。

そのため、MyReferが独立した後の1〜2ヶ月は、事業を伸ばすよりバックオフィスを整えることに経営陣のリソースを割きました。これは結果的によい判断だったと思っています。

組織構築の上で、反省している部分はありますか。

鈴木 もともと社内ベンチャーとしてMyReferを創業した際に、社内の人間をほとんど採用しなかったんですよ。

「社内でナンバーワンじゃない人達に新規事業は任せられない」と思って、社外から採用していたんです(笑)。

しかし今振り返ると、バイアスのかかった判断でした。

やはり大手で活躍している人材は優秀です。

特に『人』が重要な経営資源であるBtoBかつシリーズAのスタートアップであれば、1→10や10→100の成長を実現する上で、大企業で活躍していた人材は非常にマッチしていると思います。

大企業からスタートアップへの転職を考える人に、アドバイスはありますか。

鈴木 スキルセットがあれば、スタートアップでも同様に活躍できると伝えたいですね。

個人的には、ファイナンスの概念のように「将来価値」の考え方を持つべきだと思っています。

なんとなく大企業で35歳まで勤めた人と、28歳でスタートアップを起業して失敗した人がいるとします。

たしかにお金はないかもしれませんが、私が一緒に働きたいと思うのは後者です。伸びしろこそが重要だからです。

MyReferはスタートアップでありながら、元大企業でもあります。いい意味でも悪い意味でも両方のバックボーンを兼ねそろえているので、「挑戦と安心がセット」の制度設計をしています。

「大企業にいるけど、新規事業をつくりたい。もっとサバイブしたい。」そういったエネルギーを持て余している方とぜひ一緒に働きたいです。

(聞き手:松岡遥歌、文:三浦英之、写真:INITIAL)


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